『ミステリマガジン2025年10月号』
出版社:早川書房
発売日:2025年8月25日
雑誌コード:08439-10
ハヤカワまつりに参加する前に読もうと思ってポケミス70周年記念特集の2023年11月号ぶりに購入した。久しぶりだったので発行月が2・5・8・11月に減った事を知らなかった。年4回なら定期購読できそうなので挑戦してみたい。
p.65まで『九龍城塞』の特集が色々載っていたが、『九龍城塞Ⅰ 囲城』を読んでいないので軽く流し読みした程度。『九龍城塞Ⅱ 龍頭』の冒頭部分は初見でもエンタメ小説として楽しめ、映画の方で使用されたポピュラーソングの解説も熱量があるなと感じたので、『九龍城塞』ファンにはありがたい特集になっているのだろう。いつか映画を見た時、読み返すとどれぐらい楽しめるのだろうか。
【読み切り感想】
・『ダイヤモンド警視、語る』著:ピーター・ラヴゼイ、訳:山本やよい
ダイヤモンド警視が出版された本を絡めながら自分語りをする短編。ピーター・ラヴゼイの作品は読んだ事がないが、とりあえずスルスル読めた。ちょっと嫌味なおじさんという印象を受けたが、作者(ピーター・ラヴゼイ)に毒を吐いていたからだろうか。自分の経歴、事件や多分他の登場人物の事を語っていたのだが、どれも知らない事ばかりなのでなんか色々苦労してきたんだぐらいしか感想が思いつかない。ダイヤモンド警視がどうやって事件を解決したのか知りたくなって、せめて最初の作品『最後の刑事』だけでも読もうと思って調べてみたら絶版になっていてショック。電子版もないので図書館から借りるしかない。
・『孤独な場所』著:ジャック・ウェッブ 訳:田口俊樹
人里離れた土地で桃畑を育てている夫婦の元に謎の男が訪ねてきた話。鈍感で自己中心的な夫と何が目的かわからない危険な男に囲まれた妻が感じる恐怖と孤独がひしひしと伝わるミステリというよりはサスペンス感が強い短編。最後まで読んだ後に『孤独な場所』という題名を見てみる夫に恐怖を理解してもらえない妻の孤独感だけを表していないとわかるのが秀逸だなと感じた。
・『人生は夢のごとし』著:リチャード・オスマン 訳:羽田詩津子
ネット小説で見かけるような設定だけ固めて書き出した未完成感ある小説。というのが初見の感想。そもそも『木曜クラブ』の登場人物が初めて書いた小説という事になっているので文章に臨場感がないと思うのだが、これを訳した方がどう意識したのか解説を読みたい。
・『ムースを食べてくれ』著:エリカ・クラウス 訳:北野寿美枝
2025年エドガー賞最優秀短篇賞受賞作。題名を見た時、泡の方のムース(mousse)かと思ったらヘラジカ(moose)の方だった。内容は余命幾ばくも無いがん患者であるコラムと脳腫瘍患者であるボニーが自殺の幇助をしたら健康になった事がきっかけで病人の安楽死の補助の依頼を受け始める話。死ぬ直前の人間の渦巻く感情を赤裸々に描写した犯罪小説だった。正直最初の方はなんで自殺幇助すると元気になるんだ?と設定が引っかかっていたが、コラムとボニーのまだ生きたいという思い、人殺しをしてしまった罪悪感に触れていくと後半はかなり物語に没入する事ができ、予想以上に楽しむことができた。
ただ題名の意味が良く分からなかったので、また再読して意味を考えてみたいと思う。
【連載作品】
丁度連載スタートの作品があったため、『ポテト』の感想だけまとめた。月村了衛さんの『機龍警察』シリーズをハードボイルド小説だと思っていたが、軽く読んでみるとSF要素もあって面白そうなので、『機龍警察』完全版を読んでからまた連載を追いかけるつもりだ。
・『ポテト』連載第1回「ある証拠」前篇 著:堂場瞬一
舞台は自転車や電話が一般家庭にも普及し始めた1800年代後半のニューヨーク。アイルランド人の移民2世の刑事ジョー・マクドナルドはニューヨークの政界を裏から牛耳る政治団体、タマニー・ホテルへの潜入捜査の準備を進めていた。そんな中、タマニー・ホテルの有力者の息子、ニール・オコナ―が殺人容疑で通報され、現場で彼を取り押さえると奇妙な事にポテトを落としたのだ。本当にニールが殺人を犯したのか、なぜポテトを持っていたのか。ジョーは捜査を進めていくことになる。
登場人物のキャラクター像がこの話だけではっきり浮かび上がり、殺人、ポテト、悪の組織の存在とこれからの展開に胸躍らせる要素をコンパクトに詰め込んだ非常に完成度の高いミステリの導入でこれかの連載も追いかける気力がみなぎってきた。舞台背景の知識があまりにも乏しい自分が移民関係のいざこざを理解できるかが不安だが、頑張って読む。警察小説にしては料理の描写に力を入れていると感じたので、やはりポテトが重要になってくるのだろう。ポテトの情報を集めていたちょっと頼りない同僚、ショーンが次回死んでない事を祈る。
【ブックレビュー、その他】
インタビューが記載されていた紺野天龍さんの『聖女の論理、探偵の原罪』は表紙がかっこよかったのでそのうち買う。ブックレビューでは新潮文庫の『罪の水際』、デペイズマン効果が気になる『人形のアルファベット』を購入予定リストに追加。あとはミステリヴォイスUKで紹介されたSusan Barkerの『Old Soul』のあらすじ、不死の怪物の設定に惹かれ、著者のインタビュー文がフェミニストに関連して面白い事が書いてあったので実際に読みたくなった。日本語訳が出るのを待つか、原書のペーパーバックを取り寄せるか。お財布の中身次第だ。あとは『トランプ時代のアメリカン・ミステリを読む』の第一回『イントロダクション:境界と分断』で紹介されたドン・ウィンズロウの本も読みたいが、手に入れるのが難しそうなので、図書館で借りる予定。海外文学を読む時にその国の時代背景を知っていると面白さが増すのでこれからの『トランプ時代のアメリカン・ミステリを読む』の連載に期待。
次号はミステリファン恒例のミステリが読みたい!特集なので、絶対に買わなければならない。櫻田智也さんの『失われた貌』がランキングに入っているといいな。
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